『CHESS IN CONCERT』海外版・第一幕
<ストーリー・場面>
Prologue
The Story Of Chess
Merano/What A Scene! What A Joy!
Commie Newspapers
Press Conference
Molokov And Anatoly
Where I Want To Be
Difficult And Dangerous Times
The Arbiter
Hymn To Chess
The Merchandisers
Global TV Fanfare
Chess Game 1
The Arbiter (Reprise)
Quartet (A Model Of Decorum And Tranquility)
Florence And Molokov
1956 – Budapest Is Rising
Nobody’s Side
Mountain Duet
Chess Game 2
Florence Quits
Pity The Child 1
Embassy Lament
Heaven Help My Heart
Anatoly And The Press
Anthem
<配役>
フレデリック(フレディ)・トランパー…現世界CHESS・チャンピョン、アメリカのCHESS・チャンピオン
アナトリー・セルゲイフスキー…ソ連のCHESSチャンピョン、既婚者
フローレンス・ヴァッシー…フレディのセコンド兼秘書兼恋人、やがてアナトリーと恋に落ちる
アービター(審判員)…ワールド・CHESS・チャンピョンシップの審判
モロコフ…アナトリーのセコンドでソ連KGB
ウォルター・コーシー…アメリカのマーチャンダイザー兼フレディのエージェント
スべトラーナ・セルゲイフスキー…アナトリーの貞淑な妻
<ストーリー>
1979年メラノ
70年代後半の米ソ冷戦のさなか、イタリアのチロル地方の町、メラノで『ワールド・CHESS・チャンピョンシップ』が開催されようとしていた。現世界チャンピオンはアメリカのフレデリック・トランパー、対する挑戦者はソ連のアナトリー・セルゲイフスキー。さあ、決戦は如何に!?
どちらのプレイヤーにも大勢の支援者がいるが、その中には政治目的の者や、賭けの目的の者もいる。実に多彩な人間がこの大会に絡んでする。フレデリック・トランパー、通称“フレディ”のグループのリーダーは、長く付き合っている恋人でハンガリー生まれのイギリス人、フローレンス・ヴァッシー。フレディのエージェントであるウォルター・コーシーもチームの一員だ。一方、アナトリーの一団のリーダーは、ソビエト政府KGBのアレクサンダー・モロコフで、この選手権を利用してソビエト共産(社会)主義者をなるべく多く産出するようTOPから命じられていた。CHESSの神聖な戦いは、プレイヤーのしならないところで、“米ソ冷戦”にそのまま利用されようとしていた。
知的スポーツであるCHESS選手権は、無情なまでに審判員(アービター)に支配される。アービターは強気だ。「私は審判、私の言葉は法律」。アービターが、古代CHESS・ゲームの起源や歴史を説明し、メラノでの世界選手権の開幕を高らかに告げる。
米ソ間のプロパガンダ競争には気付いていない素朴なメラノの人々は、自分達の街を世界中の人々に紹介できるのを楽しみにしていた。だが、この純粋な歓待ムードも、フレディとその一団が到着すると一変する。フレディは、あのテニス界の風雲児“ジョン・マッケンロー”を髣髴させるように物議をかもす発言を次々に発する。その度に、人々は注目し、フレディの奇行だけが目立つ。まるでフレディは、競技会で自分が悪役を演じることを嬉しく思っているようだ。保守的なメラノの人々は、せっかくの自分達の街を世界に正しく発信するチャンスをなくしたと感じ、自分達の街の賞賛の賛歌を終わらせる。
フレディの挑発的な戦略に対するメディアの反応について、フレディとフローレンスはホテルの部屋で話し合う。フローレンスは、今度の記者会見では反ソ的な発言を控えるようにフレディに懇願するが、フレディは聞く耳持たずだ。そしてあろうことに、世界中から記者が集まるその会見で、フレディはフローレンスのアドバイスを忘れて記者を殴ってしまう。ああ、なんてことだ。世界的権威の大会の前に暴力とは…。だが、フローレンスはそんなフレディの常軌を逸した行動に驚嘆しながらも、それでもフレディの退場後、いつもと変わらず彼を弁護する。「私がいないとフレディは…」まるで「母と子の」関係のようだ…。
アナトリーとセコンドのKGBモロコフは、ホテルのテレビでこの奇怪な行動を見ていた。モロコフはフレディが正気ではないとフレディを切って捨てる。しかしアナトリーの考えは違った。フレディは、試合前に上等な手段を講じて、騒ぎを起こしているだけなのではないか?と考える。モロコフは、あのイカレタ、フレディを動揺させる為には恋人のフローレンスを利用するしかないとアナトリーに進言する。しかし、CHESSに集中したいアナトリーは、そうしたセコイ戦略が大嫌いだった。彼は、モロコフを追い出す。一人になったアナトリーは、この状況をじっくり考える。
試合前の準備は進み、両者の代表者が選手権会場に集まって挨拶する。フレディとアナトリーの姿勢全く違った。友好関係を維持するのが精一杯であったが、アービターがようやく両者をとりなす。アービターは基本のルールを取り決め、試合の成功のために全員を協力させる。一方、ウォルター・コーシーが一番興味を持っているのはこの盛大な競技会をビジネスに役立てることであり、アービターの尊大な言葉とは対照的に、様々なCHESS商品を紹介する。そして、この競技会をテレビで世界にむけて紹介する。全てはマネー、マネー、マネー。
第一戦が始まった。プレイヤー両者はどんどん熱くなり、またもやフレディが暴れる。彼は自分の競技場でもあるCHESS盤をひっくり返してしまったのだ。ああ、またまたなんてことを…。会場はどよめき、悲嘆にくれ、あるいは怒り心頭、大騒ぎになる。アービターは騒ぎを静めようとする。モロコフとフローレンスを急いで呼び寄せて話し合い、まだ会場に残っていたアナトリーも話し合いに加わる。フローレンスは、二人のソ連人からの批判に対してフレディを誠実に弁護するが、アナトリーとのやり取りにはなぜか暖かい空気がある…。どうしたと言うのか?
フローレンスとモロコフがホテルに戻って話し合う。どちらも試合の再開について心配しているものの、すぐに激しい言い合いになる。それは、フローレンスが自分の過去を話し始めたからだ。1956年にハンガリー動乱の際に国民がロシアに何をされたのか、幼少時に自分の家族に何が起こったかを話し、ロシア人は大嫌いだとモロコフに反ソ姿勢を示す。彼女は母親と国外に逃亡し、父親は行方不明でおそらく死亡しているのだろう…。やがて本題に戻った二人は、フレディとアナトリーに山のホテルでオフレコの会談をさせることで同意する。
フレディはフローレンスの持ちかけた交渉には気が進まなかった。それよりも、試合中の退場を理由にウォルターがエージェント手数料のアップを要求したことの方が大事だと言いだす。フレディは、フローレンスが相手側、特にアナトリーと親密になってきていることを罵倒し、二人は激しい言い争いをする。フレディの悪意に疲れ果てたフローレンスは、ふと気付くと、これまでの人生のあらゆる局面に思いを巡らせていた…。
それでも、フローレンスは状況を立て直すことができるのではという望みを捨てず、山での会談に出かける。会談にはアナトリーは来たが、フレディの姿はない。最初はかみ合わなかったフローレンスとアナトリーの会話は、徐々に親しみを帯びてくる。明らかに恋に落ちた二人…。その時フレディが、最悪のタイミングで現れる。二人の様子を目の当たりにして怒ったフレディは、試合には戻るがもう友達でも何でもないと言ってのける。
試合再開後の数日間の結果はアナトリーが5勝1敗、アナトリーの勝利は事実上確定する。6勝した方がタイトルを獲得するのだ。失意のフレディは、最終戦の前に、フローレンスと最後の言い争いをする。翌日、両プレイヤーが試合に登場するという時になって、フレディは試合を棄権する。だが、それよりも大騒ぎになったのは、新世界チャンピオンとなったアナトリーが姿を消し、西側への政治亡命を求めているという驚きのニュースだった。
アナトリーは、フローレンスを連れて亡命のために英国領事館に現れる。妻子をモスクワに残していくことを認めさせようとする領事館職員とのやり取りに、アナトリーが奮闘している間、フローレンスは、ほとんど何も知らない男と人生をすっかり変えるような行動に出た状況を理解しようともがく。そこに突然、アナトリーの行動をかぎつけたマスコミが現れる。ウォルターが情報を漏らしたのは明らかだ。アナトリーは、祖国を捨てるのではないと否定する。
*『CHESS IN CNCERT』スコア参照
続く