さあ、いよいよ〝日本初〟のミュージカル『CHESS』上演まであと3日と迫りました。
でも「イマイチCHESSの内容がわからないんだよねぇ」という人の為に今日と明日の二日間で『CHESS』の簡単な概略をまとめます。少しでもお役に立てれば幸いです。
1.これは「米ソ冷戦」時代で話である
まず『CHESS』の時代背景を見てみましょう。1979年となっています。「ベルリンの壁崩壊」10年前ということになります。この頃は「世界史」でも習ったように、世界の二大国、アメリカとソビエトが〝世界の覇権〟をかけて、直接戦争せずに、スパイ合戦や同盟国との軍事強化などで、お互い牽制しあっていました。このことを俗に〝冷たい戦争〟と呼んでいます。「米ソ冷戦」と言われる由縁です。
実はこの『CHESS』というミュージカルには、ほとんど『CHESS』をしているシーンが出てきません。つまり『CHESS』の戦いそのものの戦いを描いたミュージカルではなく、『CHESS』 を利用して、米ソが、自分達の利益の為に、醜い人間の性(さが)を表現したミュージカルなのです。
★アメリカ陣営
●フレデリック(フレディ)・トランパー:現世界CHESS・チャンピョン、アメリカのCHESS・チャンピオン
●フローレンス・ヴァッシー:フレディのセコンド兼秘書兼恋人、やがてアナトリーと恋に落ちる
●ウォルター・コーシー:アメリカのマーチャンダイザー兼フレディのエージェント、アメリカ・グローバルテレビジョンの司会者
☆ソビエト陣営
〇アナトリー・セルゲイフスキー:ソ連のCHESSチャンピョン、既婚者、現世界チャンピョン、フレディの挑戦者
〇モロコフ:アナトリーのセコンドでソ連KGB
〇スヴェトラーナ・セルゲイフスキー:アナトリーの貞淑な妻(第一幕では原則、出て来ない)
▲中立
●アービター(審判員):ワールド・CHESS・チャンピョンシップの審判
△その他
〇古都メラノの人々:『ワールド・CHESS・チャンピョンシップ』が開催されるイタリアの古都の人達。自分達の街で『大イベント』が開かれることで街を上げて喝采し、興奮している。がやがて、その熱気も冷める……
〇マスコミ、メディア:この世紀の戦いを取材しに来たと思いきや、『CHESS』とは全く関係ない質問をチャンピョン、フレディにぶつけ、そして……
3.話の流れ
最近の『CHESS』は2008年ロンドンで上演された『CHESS IN CONCERT』に基づいています〝最新『CHESS』〟だ。曲は1984年発表当時より多数ありましたが、その後何度も曲は入れ替えられ、今では『CHESS』を指揮する監督によって、どんな曲を使用するかは自由裁量で決められようになりました。
ゆえにこれから説明する『CHESS』の話の流れはあくまで「筆者の推測」です。ゆえに10月2日からの本番で違う場合もあることをあらかじめ了承いただきたいと思います。
1. Prologue
2. The Story Of Chess
主な登場人物が舞台に出て来て『CHESS』の歴史など歌いながら述べる。
3. Merano(古都メラノ)/What A Scene! What A Joy!/Merano [Reprise]
アービター(審判)が高らかに『ワールド・CHESS・チャンピョンシップ』開催を宣言する。
開催場所はイタリアの古都「メラノ」。メラノの人々はこの世紀の戦いをたたえる。
そこに現世界チャンピョンのアメリカのフレディが畏怖堂々と出て来て、メラノの人々は感動と同時に驚嘆する。
その後、ソビエト陣営のKGBモロコフと、現ソビエトチャンピョンで、フレディの挑戦者のアナトリーが到着し、このメラノの人々の大騒ぎにビックリ仰天する。
4. Commie Newspapers
フレディとフローレンスがホテルで新聞を読んでいる。マスコミがメラノの人々の歓迎で見せたフレディの奇行を好き放題書いているのだ。
5. Press Conference
フレディがメディアにインタビューを受ける。だが質問内容はCHESSとは関係のないことばかり。CHESSをするためにメラノに来たフレディは怒り心頭で、ついに記者の一人を殴ってしまう。
6. Molokov And Anatoly(モロコフとアナトリー)
このフレディのマスコミとのやり取りをホテルのテレビで観ていたソビエト陣営のモロコフは、そばにいたアナトリーに、フレディの常軌を逸した行動はチャンピョンにふさわしい行動ではないと非難し、唖然とする。しかしアナトリーはフレディの行動は馬鹿でも何でもなく、彼特有の「芝居」だとモロコフに反発する。アナトリーはCHESSに集中したい為、くだらないことに付き合っている暇はないので暫く一人にしてくれと述べ、モロコフを部屋から追い出す。
7. Where I Want To Be(私の目指す場所)
部屋に一人になったアナトリーは状況と自分の人生をじっくり考える。
https://www.youtube.com/watch?v=c6kOwdFlf-k
夢だって?
野望だって?
私の立場に立ちながら
ピエロになれというのか?
かつての私の夢は
今は憑き物のように私ことり憑く
希望は要求に変わり
恋人たちも所有物と同じ
その時、彼らがやって来た
最初はゆっくりと
そしてつつましく……
甘ったるい微笑みを浮かべて
私は扉を開けた
彼らはつかつかと歩みよった
彼らのことなどほとんど知らないのに
彼らは私を友と呼んだ
今、私は望む場所に立ち、自己を実現し
自分のやりたいことも成し遂げてきた
だが、本当の勝利を手に入れた実感がない
命からがら生き伸びて、決して後は振り返えらなかった
私の背中を狙い撃ち
私が陥るのを望む黒い存在を恐れて……
狂った車輪がスピードを落とすとき
私は一体どこに行くのだろう?出発点に戻るのだろうか?
どうか誤解しないでくれたまえ
不平を言っているんじゃない
これまで時(とき)は私の味方だった
あっという間に過ぎた楽しい日々…
でも、もし、私か愛だけでなく
すべての感情を
隠してしまったら
一体、何になるというんだろう……?
今、私は望む場所に立ち、自己を実現し
自分のやりたいこともなし遂げた
だが、本当の勝利を手に入れた実感がない
命からがら生き伸びて、決して後は振り返えらなかった
私の背中を狙い撃ち
私か陥ちるのを望む黒い存在を恐れて……
狂った車輪がスピードを落とすとき
私は一体どこに行くのだろう?出発点に戻るのだろうか?
8. Difficult And Dangerous Times
アメリカ陣営とソビエト陣営が一堂に会する。
9. The Arbiter
アービター(審判)が『ワールド・CHESS・チャンピョンシップ』開始を高らかに宣言する。だが、このアービターも実はかなりの偏屈もの。アービターは自分の存在と意義を上から目線で一堂に述べる。「自分がルールだ」。それがアービターの姿勢だ。
https://www.youtube.com/watch?v=J6uh7tRh9Jc
[アービター(審判)]
私の仕事はレフリー
試合開始の際には
全スポンサーの代表として
みなさんに歓迎の辞を
述べさせて頂きたい
どちらが勝っても私には関係ない
誰も私にちょっかいは出させない
私は冷静で中立の立場
正義一筋
ブラック又はホワイト
私は審判、ただ今、審判中
正義一徹、干渉はさせない
反対意見は
ただちに却下
そう、私は番判、任せるがいい
[コーラス]
彼は公平!どんなに押しても動じないさ
[アービター]
それぞれ隠し持つ秘密のトリック
まあ、お好きなように……
だが作戦はお見通し
私は審判、得点表が相棒
[コーラス]
四角い掲示板から、彼は64駒を見続ける
[アービター]
過去に登場したモロモロを
ちょっと振り返って考えてみようか
歌う導師やウォーキー・トーキー
ストライキに睡眠技師
かんしゃくに挙に……まだよちよち
このゲームは第三次世界大戦の始まりじゃない
政治的策略はご法度被る
双方の憲法もご立派だし
そう、だから、いい子ちゃんでいてくれよ
私は審判、ただ今、審判中
正義一徹、干渉はさせない
反対意見は
ただちに却下
そう、私は審判、任せるがいい
[コーラス]
彼は公平 どんなに押しても動じないさ
[アービター]
それぞれ隠し持つ秘密のトリック
まあ、お好きなように……
だが作戦はお見通し
私は審判、得点表が相棒
[コーラス]
四角い掲示板から、彼は64駒を見続ける
[アービター]
そう、私は審判、任せるがいい
[コーラス]
四角い掲示板から、彼は64駒を見続ける
<続く>