『マンマ・ミーア!ヒア・ウィー・ゴー』封切りまであと2日となりました。当サイトでは毎日「サウンドトラック」に沿って、ABBAの名曲を解説していきたいと思います。
その第十七弾は「スーパー・トゥルーパー」。ABBA7枚目アルバムLP・CD『スーパー・トゥルーパー』に収録されています。
劇中では、シェールを筆頭に全員で披露しています。
「スーパー・トゥルーパー」 SUPER TRUPER
「スーパー・トゥルーパー」とはコンサート会場などで使用される巨大なスポットライトのこと。業界用語で本アルバムの中でも一番LASTに作られた楽曲(実は次回作の新曲だった)。新曲を作っている最中に、既にアルバム・タイトルが決まっていたLP『スーパー・トゥルーパー』という名称がそのまま使えるのではないか?と判断し使用することに決まった。
ワールド・ツアーを終えたばかりのABBAに相応しい名称として選ばれたタイトル「スーパー・トゥルーパー」。当初はあくまでもアルバムの呼称であり、同名の楽曲は存在していなかった。しかし、アルバムの最終チェックを行っていたビヨルンとベニーは、シングルとして相応しい楽曲がもっと必要だと判断。アルバムのジャケット撮影を目前に控えたこの段階で、彼らは丸二日間スタジオにこもって新作を書き上げた。それが本作だ。
当初のタイトルは「キラキラ光る小さなお星さま」というもの。ところがサビのメロディを繰り返し聴いていたビヨルンとベニーは、アルバム・タイトルの「スーパー・トゥルーパー」というフレーズが偶然にもピッタリとハマることに気付いた。
しかし、いざビヨルンが作詞に取り掛かろうとしたところ〝巨大なスポットライト〟というタイトルに見合うような歌詞というのがなかなか思い浮かばない。考えあぐねた末に突如として湧いたのが、当時出会ったばかりだった現在の妻レナのことだった。ジャパン・ツアーで日本各地を回っている間、離れ離れになったレナのことばかりを考えていたビヨルン。客席の中にレナがいてくれたら何と嬉しいことだろう。そんな記憶が甦ったビヨルンは、その素直な気持ちを歌詞に投影することにしたのだ。
従来のABBAらしいキャッチーなメロディとアップビートなリズム。しかし、そこはかとない哀しさを湛えた独特のセンチメンタリズムが、これまでのABBA作品とは一味も二味も違う余韻を残す作品。低音で陰りのあるフリーダのリード・ヴォーカル、ABBAらしい心地よいハーモニー、「スパパ、トゥルパパ」という男性陣のコーラス。何もかも完璧に仕上がった楽曲だ。この曲を聴くたびに心が落ち着く人も多いのではないだろうか?
アルバムからのセカンド・シングルとしてリリースされた本作は「ザ・ウィナー」に続いて全英チャート一位を獲得。さらに、ベルギー、ドイツ、オランダ、アイルランドでもナンバー・ワンとなり、ノルウェイで二位、オーストリア、スイス、メキシコで三位、フランスで四位、フィンランドで五位、スペインで八位をマーク。その他、本国スウェーデンで十一位、ジンバブエで十八位、アメリカでは四十五位を記録。ちなみに日本では意外にも伸びず六位が最高位。武田鉄也主演の『三年B組金八先生』にも劇中、三原じゅん子が電話している場面でBGMとしてかかっている。覚えているだろうか?
尚、多くの人が「『スーパー・トゥルーパー』の歌詞の中の〝NO1〟と言うのは、ABBA自身のことを言っているのでしょ?」と思っているようだ。実は、筆者も高校一年の時はそう思っていた。その後、英語が上達し、自分でも訳せるようになると、NO1とは決してABBAそのものをさしているのではないことがわかった。皆さんはどうだろうか?
スーパー・トゥルーパー*歌詞翻訳
スーパー・トゥルーパーの
光が目をくらませる
でもブルーな気分にはならないわ
いつもみたいに
だってこの人ごみのどこかに
あなたがいるのだから
なにもかもが
いやになっていたの
きのうあなたに
グラスゴーから電話をしたときは
私がしていることといえば
食べて寝て歌うだけ
これ以上ステージがありませんようにって
ステージのたびに願っているわ
だからわかるかしら
あなたが来ると聞いて
どんなにうれしかったか
突然元気になったわ
さあ、いつもとは
まったく違いそうよ
今夜の私のステージは
今夜スーパー・トゥルーパーの
ライトが照らす私は
太陽みたいに輝いて
笑顔で楽しんで
ナンバーワンの気分を味わっているわ
今夜もスーパー・トゥルーパーの
光が目をくらませる
でもブルーな気分にはならないわ
いつもみたいには
だってこの人ごみのどこかに
あなたがいるのだから
2万人もの
あなたの友達が目の前にいる
さみしくなんて
なるわけがないわ
果てしのない
成功の中で
私はやっぱり
あなただけを思っている
時々思うのよ
気がおかしくなって
いるんじゃないかと
でももう大丈夫
すべてがまったく
違いそうよ
今夜の私のステージは
今夜スーパー・トゥルーパーの
ライトが照らす私は
太陽みたいに輝いて
笑顔で楽しんで
ナンバーワンの気分を味わっているわ
今夜もスーパー・トゥルーパーの
光が目をくらませる
でもブルーな気分にはならないわ
いつもみたいには
だってこの人ごみのどこかに
あなたがいるのだから
私はステージにいるわ
あなたが来る時には
あなたを見れば
確信できるの
私はまだ生きているって
そして私を
腕に抱いて
ぎゅっと抱きしめてくれるとき
今夜はきっと
特別になるわ
今夜スーパー・トゥルーパーの
ライトが照らす私は
太陽みたいに輝いて
笑顔で楽しんで
ナンバーワンの気分を味わっているわ
今夜もスーパー・トゥルーパーの
光が目をくらませる
でもブルーな気分にはならないわ
いつもみたいには
だってこの人ごみのどこかに
あなたがいるのだから