NHKは11月3日水曜日文化の日、19時からのニュース番組でABBAを取り上げ、べた褒めした。
ストックホルムにあるベニーのスタジオで直接インタビュー、なかなかの好番組だった。
内容は以下の通りである。
『ABBAが帰ってきた!』
人気絶頂にあった時期に活動休止を発表したが、残した楽曲は色あせず、今なお世界各地で歌い継がれている。
そのABBAが、40年ぶりに活動を再開すると発表した。
なぜ今、表舞台に戻ってきたのか。活動再開の発表後、初めて日本のメディアの取材に応じた2人のメンバーの思いに迫った。
「マンマ・ミーア」「チキチータ」「ダンシング・クイーン」・・・。
今でも日本のドラマやコマーシャルなどに使われ、メロディーを聞けば誰もが聞いたことはあると答える楽曲の数々。
スウェーデンのポップグループ、ABBA。
ビヨルン・ウルヴァース、ベニー・アンダーソン、アグネタ・フォルツコグ、アンニ・フリード・リングスタッドの4人で結成し、それぞれの名前の頭文字を取って「ABBA」と名付けた。
キャッチーなメロディーと華やかなサウンド、そして女性デュオ・ボーカルの伸びやかな声とハーモニーが多くのファンをひきつけた。
グループとしての活動期間は1974年から1982年までの10年足らずだったが、世界的ヒット曲を連発し、音楽界に大きな足跡を残した。
活動休止後も楽曲はさまざまなところで歌い継がれ、1992年に結成20年を記念して発売されたベストアルバムがイギリスやアメリカのヒットチャートを席巻し、世界中で2800万枚以上を売り上げるなど、「ABBAサウンド」は今も世界を魅了し続けている。
自身が司会を務めるラジオ番組でABBAと共演したこともあるという音楽評論家の湯川れい子さんは、ABBAの魅力は、誰もが親しめるそのポップセンスにあると語る。
(湯川れい子さん)
「歌詞はそれほど重要ではなくて、サウンドと声とそのポップセンスに秀でたグループだった。本当に楽しくて聞きやすくて、耳障りがよくて、意味は関係なく一緒に口ずさめて、踊れる曲なんです。だからこそ世界でヒットしたんでしょうね」
ABBAはことし9月、およそ40年ぶりとなる新曲を公開し、グループとして活動を再開することを発表した。
メンバー全員が70歳を超えた中での活動再開の知らせは、世界中を驚かせた。
40年という「ブランク」を経て新たに生み出されたABBAの新曲。
湯川さんはかつての魅力に加え、新たな音楽性を聞き取ったという。
(湯川れい子さん)
「本当に40年ぶりに聞いたときにやっぱり1番不安だったのは声ですよね。(当時の)あの声がでるのかなと思って、特に女性2人の声は本当に心配しましたけど、2人の声は本当に素敵で、全然年齢を感じさせない。でもやっぱりどこかやはり大人の潤いはありますよね。吹き抜けるような若さとはまた違う面もあって、よかったと思いました」
40年ぶりとなるアルバムの発売を前に、ABBAの作曲を手がけるギター担当のビヨルン・ウルヴァースさん(76)とピアノ担当のベニー・アンダーソンさん(74)の2人の男性メンバーがNHKのオンラインインタビューに応じた。
活動再開を発表してから初めてとなる日本メディアからの取材。
ストックホルムにあるスタジオで取材に対応してくれた2人は、リラックスしたようすで、私たちの質問に真摯に答えてくれた。
まず聞いたのは、活動再開を決めた理由について。
きっかけとなったのは、ABBAターを使ったABBAのツアーライブの計画が持ち上がったことだったという。
(ベニー)
「ストックホルムから遠く離れることなく、ABBAのツアーをやったらどうかというアイデアがあったんです。3000人収容できるロンドンの特設アリーナで、必要なあらゆるテクニックを駆使して、10人のライブ・バンドと一緒に、デジタル版ABBAをステージ上で再現できるというものです。そのコンサートでいくつか新曲を披露すべきではないかと考えました。それでフリーダとアグネッタに連絡しました。『どうかな?このショーのためにいくつか新曲をレコーディングしてはどうだろうか』と話したところ、彼女たちも『イエス!やりましょう』と言ってくれました」
当初はツアーに合わせて新曲2曲を制作するだけの予定だったが、ボーカルの2人の歌声を聞いて考えが変わったという。
(ベニー)
「彼女たちの美しい歌声は今でも健在で、曲も問題なし、レコーディングも問題なし、ということで、もう少しやったらどうか、どうなるかやってみようということになりました。それで最終的にはフル・アルバムとなりました」
(ビヨルン)
「彼女たちも本当に喜んでいました。スタジオに来る前、歌い始めるまでは彼女たちも少し不安だったと思います。うまくいくかどうか分からなかったので。でも一旦戻ってきて、歌い始め、それを聞いたら私たち全員、非常に前向きに、ポジティブに感じました。ABBAらしいサウンドになっていて、今までと同じく、きちんとできるということがわかりました」
計画を進めていたツアーライブは、来年5月にロンドンのアリーナで行うことが発表された。
最新の特殊なカメラでとらえた4人の姿を立体映像で再現し、コンサート会場に投影される彼らの分身、いわゆる「アバター」を通じて生のバンドと演奏をする計画だという。
歳を重ねた今、新たなチャレンジに挑もうとする原動力は何なのだろうか。
(ビヨルン)
「やってみようと思ったのは好奇心からです。できるのか?本当にこんなことが可能なのか?自分たちのデジタル版を作るなんて。できるのか、どんな風に見えるのか?それはどのような新しい体験になるのか?それ自体がたまらなく魅力的だと思いました」
(ベニー)
「40年前のほうがもっと簡単だったかもしれないとは思います。でも今回の決断をするのは簡単で、そんなに長くはかかりませんでした。スリリングな経験だからです。まだ誰も見たことがありません。私たちも見たことがないものです。どんなものになるのか。ショーを見に来ることはアドベンチャーになるでしょう」
新作アルバムとコンサートツアーのタイトルはいずれも「ヴォヤージ」。
日本語では「旅」や「航海」と訳されるこのことばにどんな思いが込められているのか、2人に聞いてみた。
(ベニー)
「プロデューサーがアイデアを思い付き、『ヴォヤージ』はどうだろうと言ったのです。私たちも気に入りました。コンサートショーのタイトルでもあり、アルバムのタイトルでもあります。実際に、それはヴォヤージでした。この40年間、私たちは一緒ではありませんでした。ビョルンと私はいろいろなプロジェクトでいつも一緒でしたが、2人の女性は自分たちで暮らしていました。ですが、(心の中では)4人は一緒に旅をしてきたつもりです。1972年から2022年までの旅路です」
(ビヨルン)
「私たちは旅に出て、未知の領域に突入しようとしています。これがどのように受け止められるのか、私たちにはわかりません。リスクもあります。それが旅に出るということです。ヴォヤージ=旅というのは、最終的にどこに行きつくのかわからないまま、夕日に向かって進んでいくことです」
この40年の間、世界は大きく様変わりした。その変化は楽曲作りにも影響があったのではないかと尋ねると、2人はこんな答えを返してくれた。
(ベニー)
「私はずっと仕事をしてきました。この40年間、毎日、ずっと曲を書いてきました。いろいろなプロジェクト向けに曲作りをし、オーケストラもあったし、映画音楽もありました。ミュージカルも2本やりました。『マンマ・ミーア!』もカウントすると、3本です。今まで通り、ずっと仕事をしてきました。何も変わりません」
(ビヨルン)
「いろいろなことが変わりましたが、曲作り自体は、私たちのやり方でも、他の人たちのやり方でも、変わっていません。同じです。昔のベートーベンも。比較にはならないかもしれませんが。彼らも昔、自分たちの曲を作っていました。同じことです。曲は曲です。音楽は永遠です」
長年待ち望んだファン、そして当時のABBAを知らない若い世代に向けて、メッセージをもらった。
(ビヨルン)
「私たちを見てください。明日、マラソンだってできると思います。まだまだ希望があり、目の前には人生があります。若い人たちも本当に大歓迎。私たちの音楽を気に入ってくれてとても感謝しています」
(ベニー)
「今でも応援してくれてありがとうございます。私たちが40年前にやったことを今でも楽しんでくれてありがとうございます。最新アルバム『ヴォヤージ』も楽しんでいただけたらうれしいです。若い人たちも大歓迎です。若い世代はハイテクが好きですからね。とにかく皆さんに楽しんでいただければと願っています」
×フリーダ・リングスタッド→○アンニ・フリード・リングスタッド(フリーダはニックネームのような感じ)