ABBAは世界で最も成功したポップグループのひとつですが、「恋のウォータールー」や「ダンシング・クイーン」といったヒット曲に比べると、まだ知られていない隠れた名曲も数多く存在します。フレイヤ・イングラムが、聴くべき10曲を紹介します。
ABBAは史上最も成功したポップグループのひとつであり、その数々のヒット曲は50年以上にわたってダンスフロアを彩り続けています。
1974年のユーロビジョン・ソング・コンテストで、「恋のウォータールー」を引っ提げた4人組──ビヨルン、ベニー、フリーダ、アグネタ──が一躍脚光を浴びて以来、彼らの音楽は時代を超えて愛され続けています。
この人気を後押ししたのが、ウェストエンド・ミュージカル『マンマ・ミーア!』と、それを原作とした2本の大ヒット映画、そしてロンドンに特設されたアリーナで開催されているコンサート体験『ABBA VOYAGE』です。
今では「ダンシング・クイーン」や「テイク・ア・チャンス」といったクラシック曲は誰もが知っていますが、ABBAの魅力はヒット曲だけではありません。カジュアルなリスナーが知らない隠れた名曲も数多く存在します。そこで、ビヨルンの80歳の誕生日を記念して、ぜひ知ってほしい隠れた名曲を紹介します。
*あなたが知らないかもしれない ABBA の過小評価された名曲トップ10。
10位:「オン・アンド・オン・アンド・オン」(1980年)
「オン・アンド・オン・アンド・オン」は、ABBAの7作目のスタジオアルバム『スーパー・トゥルーパー』からのセカンドシングルです。1980年にリリースされ、オーストラリアでは9位を記録(イギリスでは発売されませんでした)。この曲は、困難な時期でも楽しむことを忘れないようにというメッセージを伝えています。繰り返しのコーラスも、ABBAの手にかかれば耳に残る名フレーズに仕上がっています。
9位:「落ち葉のメロディ」(1974年)
スペイン語の「アスタ・マニャーナ」は英語で「また明日」という意味です。一見、「また明日会いましょう」という希望を感じさせますが、歌詞の本意は「どこでいつ会えるかわからない」という切ない想いを表しています。元恋人への想い出と再会を願う、愛情あふれるミュージカル・ラブレターです。
8位:「ホール・イン・ユア・ソウル」(1978年)
この1978年の楽曲は、『ABBA VOYAGE』のセットリストでも2曲目に登場し、観客を一気にダンスへと誘うアップビートナンバーです。もともとコンサートツアー用に書かれ、1979~80年の北米・ヨーロッパツアーでも披露されました。ロックンロール風の高揚感あふれるライブ向きの一曲です。
7位:「イフ・イット・ワズント・フォー・ザ・ナイツ」(1979年)
この曲は、ビヨルンがアグネタとの離婚を進めていた当時の心境を反映しています。アップテンポなメロディに反して、孤独な夜を恐れる暗い心情が歌われています。昼間は仕事で気を紛らわせても、夜になると孤独に直面する──そんな苦しみが描かれています。
6位:「サマー・ナイト・シティ」(1979年)
1978年リリースの「サマー・ナイト・シティ」は、ストックホルムの暖かい夏の夜を讃えたソウル調のナンバーです。ノルウェーで2位、フィンランドとスウェーデンでは1位を記録しましたが、イギリスやオランダでは5位にとどまり、グループ自身は「失敗作」とみなしていました。
5位:「ソー・ロング」(1975年)
「ソー・ロング」は1975年のアルバム『ABBA』からリリースされた最初のシングル曲です。「恋のウォータールー」と似たアップビートな曲調であったため、イギリスではチャートインしなかったとも言われますが、単体でも十分に輝く楽曲です。
4位:「ザッツ・ミー」(1976年)
「ザッツ・ミー」は1977年に日本でのみシングルリリースされ、チャートで75位を記録しました。他国では「ダンシング・クイーン」のB面としてリリースされました。自由を愛しながらも、本物の愛を求める女性の気持ちがピアノのリズムに乗せて歌われています。
3位:「ジャスト・ア・ノーション」(2021年)
もともと1978年の『ヴーレ・ヴー』制作時に録音されながら、アルバムには収録されなかった幻の曲です。当時は「ミックス不可能」と判断されましたが、2021年、ABBAのカムバックアルバム『VOYAGE』で蘇りました。新たなインストゥルメンタルを加えつつ、1978年当時のボーカルトラックが使われており、オリジナルの魅力がしっかり残っています。
2位:「タイガー」(1976年)
1976年のアルバム『アライバル』に収録された「タイガー」は、都会の危険をテーマにした楽曲です。アグネタとフリーダが力強く歌い上げる冒頭──「この街はジャングル、気をつけて/真夜中に一人歩きしてはいけない」──が印象的です。特に1977年のオーストラリア公演でのパフォーマンスはファンの間で有名です。
1位:「皆なで踊ろう」(1974年)
第1位に選ばれたのは、別れの直前にカップルが最後のダンスを踊る姿を描いた「皆なで踊ろう(ダンス:ホワイル・ザ・ミュージック・スティル・ゴーズ・オン)」です。1974年のアルバム『恋のウォータールー』に収録されていますが、タイトル曲「恋のウォータールー」の陰に隠れ、あまり注目されませんでした。それだけに、知る人ぞ知る、心にしみる名曲です。