『CHESS』は元来、アメリカのCHESSチャンピョン・フレディと、旧ソビエト連邦のチャンピョン・アナトリーの『CHESS世界一大会』を、当時の米ソ冷戦になぞり製作された作品だが、「一体、主役は誰なのか?」とても複雑な内容になってしまった。1986年にロンドンでオープニングした『CHESS』は、その後、頻繁に改良が加えられ、今では一応、フローレンス主役のストーリーに定着した。だが、広義に言えば、フローレンス、アナトリー、フレディを基軸に構成されていると言った方が適切かもしれない。
安蘭けい(以後、敬称略)にとっては“当たり役”のように思える。フローレンスは“陰”を抱えた女性。しかし『ワールド・CHESS・チェンピョンシップ』を通し、フローレンスの人生は徐々に変化していく。だが彼女の人生は実は“波乱の連続”であった…。その過去と現在の“心の葛藤”“心の渇望”と言った喜怒哀楽をどう表現できるかが、今回の大きな見ものである。彼女は決して“冷静沈着”な女性ではない。
では“フローレンスの陰”とは何か?それは1950年代半ばに話を戻さなければならない。彼女はハンガリーで生まれ、ハンガリーで育った。だが1956年、フローレンスが2歳の時に『ブタペスト反乱』が勃発し、戦乱の最中、彼女は母親に手を引かれ、祖国を後にする。その際に父親は蒸発してしまう…。彼女は西側(昔のアメリカ・イギリスを中心として民主主義諸国)に亡命し、英国に帰化する。フローレンスは蒸発した父の行方を必死に探すが見つからない。そんな時、英国でフレディと出会い、以来、フレディの傍らで7年間セコンド兼秘書を務めて来た。フローレンスとフレディの年齢はほぼ同じである。にも関わらず、二人の関係は、まるで母と子のようであった…。それでもフローレンスはフレディを支え、尽くしてきた。だが、この大会を機に、とうとうその関係にも終止符が打たれる。彼女が本当に心から信頼できるのは自分自身だけだ、と兼ねてから感じていた想いが『確信』へと変わっていくのである…
なお、フローレンスのフルネームは、フローレンス・ヴァツシーである。
<フローレンス役…安蘭けい>
1989年、宝塚音楽学校入学。卒業時の成績は首席。
1991年、第77期生として宝塚歌劇団に入団。月組『ベルサイユのばら』で初舞台を踏む。同期生には春野寿美礼、朝海ひかる、花總まり、成瀬こうきなど。
1992年、雪組に配属される。
1995年、新人公演『JFK』で初主演。ジョン・F・ケネディ役を演じる。『エリザベート』のルドルフの子供時代や『ICARUS』のイカロスなど、少年役を相次いで演じた。
1999年頃からは組替えで雪組に配属、同期の朝海、成瀬とともにトリオで使われることが多かった。後に「雪組三兄弟」(当時流行していただんご三兄弟に由来)とも呼ばれる。
2000年、星組に組替え。
2003年には日生劇場『雨に唄えば』でドン役を演じる。さらに『王家に捧ぐ歌』(宝塚版アイーダ)では事実上のヒロイン・アイーダ役を演じる。『ミュージカル』誌では作品がベスト・ミュージカルに選ばれ、安蘭自身も女優部門2位、さらに松尾芸能新人賞も受賞した(現役のタカラジェンヌでは初の受賞)。
2004年には『ファントム』日本初演でシャンドン伯爵を演じる。
翌2005年、主演公演「龍星」では、複雑な生い立ちをもつ孤独な主人公を務めた。
2006年には『ベルサイユのばら』が再演され、大劇場と東京でそれぞれオスカルとアンドレを演じた。なお、この再演により本公演でオスカル・アンドレ・フェルゼンと男役が演じる三役全てを演じたことになり、これは宝塚史上初である。2006年、湖月わたるの退団を受け、入団16年目にして星組トップスターに就任。日本国籍でないことを公表したタカラジェンヌがトップスターに就任した例は鳳蘭(中国籍、後に日本に帰化)に次ぐ二人目。相手役には専科より遠野あすかを迎える。お披露目公演は、ドラマシティ・日本青年館公演『ヘイズコード』。大劇場お披露目公演は『さくら/シークレットハンター』。
2007年、『エル・アルコン-鷹-』(原作・青池保子)では、ダーティー・ヒーローを演じた。
2008年には熱望していた『赤と黒』を上演。同年6月、日本初演ブロードウェイ・ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』(原作:紅はこべ)を上演。同作の作曲家フランク・ワイルドホーンより、「ビューティフルでソウルフル。ブロードウェイーの一流の歌手と苦労して作った曲を情熱的に見事に歌ってくれた」と絶賛される。同作品は第34回『菊田一夫演劇賞演劇大賞』を受賞。『月刊ミュージカル』誌でもベスト・ミュージカルに選ばれ、安蘭自身も女優部門1位を獲得した。
これらの受賞を機に退団を決意、2009年4月26日、『My Dear New Orleans~愛する我が街~/ア ビヤント』の東京公演千秋楽を最後に退団。相手役の遠野と同時退団だった。
2009年、8月から公演されるミュージカル“The Musical AIDA -宝塚歌劇団”『王家に捧ぐ歌」より』アイーダ役で女優としてデビュー。
2010年6月には、ポニーキャニオンよりアルバム『arche』を発売。
2010年10月2日に東京・六本木ヒルズアリーナで開かれた『日韓交流おまつり2010』のオープニングに登場し、ルーツが朝鮮半島であることを明かす。後のインタビューで『焼肉ドラゴン』のような日韓合作ミュージカルや演劇への出演希望を語った。
☆最近の活躍☆
舞台
2009年8月 – 10月『The Musical AIDA -宝塚歌劇団「王家に捧ぐ歌」より-』東京国際フォーラム、梅田芸術劇場)アイーダ
2010年10月 – 11月『ブロードウェイ・ミュージカル『ワンダフルタウン』(青山劇場、中日劇場、梅田芸術劇場)ルース
2011年1月 – 2月 『ミュージカル・ディット・ピアフ』(天王洲銀河劇場、梅田芸術劇場)エディット・ピアフ
2011年5月 – 6月 『musical MITSUKO 〜愛は国境を越えて〜』(梅田芸術劇場、中日劇場、青山劇場)クーデンホーフ光子
2011年10月 – 11月 彩の国シェイクスピア・シリーズ第24弾『アントニーとクレオパトラ』(彩の国さいたま芸術劇場、キャナルシティ劇場、シアター・ドラマシティ、韓国LGアートセンター)クレオパトラ
2012年6月 – 7月 『ミュージカル・サンセット大通り』赤坂ACTシアター)ノーマ
2012年11 – 12月 『アリス・イン・ワンダーランド』(青山劇場、梅田芸術劇場)アリス・コーンウィンクル
2013年2月 – 3月 『遠い夏のゴッホ』(赤坂ACTシアター、新歌舞伎座)エレオノーラ
2013年9月 『ネクスト・トゥ・ノーマル』(日比谷シアタークリエ、兵庫県立芸術文化センター)ダイアナ
2013年10月 – 11月『DREAM, A DREAM』(東急シアターオーブ、梅田芸術劇場)*予定
★コンサート★
2009年12月 『安蘭けいファーストコンサート UNO』(東京国際フォーラム、梅田芸術劇場)
2010年3月 『Frank & Friends/MITSUKO』(オーチャードホール、梅田芸術劇場)
2010年6月 『安蘭けい 箱舟 2010』(天王洲銀河劇場、兵庫県立芸術文化センター)
2010年8月 安蘭けいmeets薬師寺三尊像『弦宴(いとのうたげ)』~薬師寺コンサート~(奈良 薬師寺大講堂特設舞台)
2012年1月 – 2月 『CHESS in Concert』(青山劇場、梅田芸術劇場)
2013年3月 『安蘭けいと京フィルプレミアムコンサート』(京都コンサートホール・大ホール)
2013年3月 『I Love Musical~ミュージカルへようこそ~』(東京グローブ座)
2013年5月 『Musical Songs Concert SUPER DUETS』(東急シアターオーブ、名鉄ホール、NHK大阪ホール)
2013年6月 『ワイルドホーン・メロディーズ~フランク・ワイルドホーン コンサート~』(オーチャードホール)
2012年12月『CHESS in Concert』(東京国際フォーラム、梅田芸術劇場)
2013年12月『華麗なるミュージカルコンサート』(新国立劇場中劇場)
続く
*安蘭けいプロフィール参照