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劇団四季 マンマ・ミーア! WATERLOO RADIO

『CHESS THE MUSICAL』①あらすじ詳細・第一幕・パート1

『CHESS』 は1986年5月14日ロンドンで開幕したが、『CHESS IN CONCERT』はそれよりも一年半早く、1984年10月27日にロンドンのバービカン・センターで開幕した。この『CHESS IN CONCERT』は大変評判がよく、その後、パリ、アムステルダム、ハンブルクを巡演し、同年11月1日にストックホルムのベルヴァルド・ホールで幕を降ろした。その間の10月29日にLPレコードは発売された。なぜミュージカルよりもコンサートやレコードの方が早く発表されたのかと言うと、ビヨルン、ベニーがミュージシャンだったから、と思われている方も多いが、実はティム・ライスのたっての希望だったのだ。まず全体のコンセプトをビヨルン、ベニー、ティム・ライスで把握し、そこから改善していく……。その甲斐あって、ミュージカル版『CHESS』上演(1986年)の前に、多くの修正を行うことを可能にした。また音楽から最初に製作することはミュージカル初製作のビヨルン、ベニーにとっても好都合で、脚本を熟知する前に、大意を掴むことが出来た。双方(ビヨルン・ベニーとティム・ライス)にとって好都合だったわけだ。なにしろ活動停止したとは言え“世界第3位(現在4位)”のレコードセールスを記録した“世界のABBA”の二人がかかわった音楽だったものだから、『CHESS』 のアルバムは瞬く間に世界を席巻し、とりわけ「ワン・ナイト・イン・バンコク」「アイ・ノウ・ヒム・ソウ・ウエル」は世界的大ヒットとなった。音楽が先行することで、ミュージカル『CHESS』の評判は鰻登りで、インターネットのなかった当時、チケットを確保するのは至難の業であった。当時学生だった筆者はANAに勤務していた従兄弟を通し確保した。とにかくチケット取得事情は今とは雲泥の差。とても大変だったことを覚えている(以下、敬称略)。

ミュージカル『CHESS』は1976年に実際に起きたロシアのCHESSプレイヤー、ヴィクトル・コルチノイの西側亡命を一部下敷きにして、ティム・ライスが5ページのあらすじを書き上げたところから制作をスタートさせた。そう、アナトリーが第一幕で亡命する箇所は、史実が基になっているのだ!

ミュージカル『CHESS』は『CHESS IN CONCERT』から2年後の1986年5月14日、ロンドン『プリンス・エドワーズ劇場』で開幕、1989年4月8日まで3年間に渡って続演された。ブロードウェイでも1988年4月28日に『インペリアル劇場』で開幕したが、4か月の短命で終了した(この理由は後日説明します)。その後『CHESS』『CHESS IN CONCERT』は世界のあちこちで上演され、日本では2012年、2013年に『CHESS IN CONCERT』日本オリジナル・ヴァージョンが梅田芸術劇場主催で上演され、ミュージカル版『CHESS』は2014年に東京インターナショナルプライヤーズが英語版で上演(『CHESS』日本初上演、ロンドン・オリジナル版の上演)、翌2015年には梅田芸術劇場が『CHESS』梅田芸術劇場ヴァージョンを上演された(梅田芸術劇場主催の『CHESS』『CHESS IN CONCERT』はいずれも梅田芸術劇場のオリジナル作品、なお『CHESS』日本語初上演は梅田芸術劇場)。今回の2020『CHESS THE MUSICAL』は「ロンドン初演版の再来」と宣伝しているが、内容は『CHESS中級者以上のレベル』。その為『CHESS初心者には超難解』なストーリーとなっている。しかも『英語版上演』なので何が何だかわからないまま2時間20分終えた観客が多かったようだ。

前回『CHESS THE MUSICAL』のダイジェスト版をご紹介したが、今日から数回にわたり「その詳細版」をご紹介したいと思う。観劇に是非、お役に立てていただければ幸いです。

1.これは「米ソ冷戦」時代で話である
まず『CHESS』の時代背景を見てみましょう。オリジナルでは1979年となっています(「ベルリンの壁崩壊」10年前ということになります)。この頃は「世界史」でも習ったように、世界の二大国、アメリカとソビエトが〝世界の覇権〟をかけて、直接戦争せずに、スパイ合戦や同盟国との軍事強化などで、お互い牽制しあっていました。このことを俗に〝冷たい戦争〟と呼んでいます。「米ソ冷戦」と言われる由縁です。
実はこの『CHESS』というミュージカルには、ほとんど『CHESS』をしているシーンが出てきません。つまり『CHESS』の戦いそのものの戦いを描いたミュージカルではなく、『CHESS』 を利用して、米ソが、自分達の利益の為に“醜い人間の性(さが)”を表現したミュージカルなのです。 なお本公演では1984年、すなわち『CHESS IN CONCERT』初演の年に設定してあります。


2.話の流れ
最近の『CHESS』は2008年ロンドンで上演された『CHESS IN CONCERT』に基づいている〝最新『CHESS』〟です。曲は1984年発表当時は多数ありましたが、その後何度も曲は入れ替えられ、今では『CHESS』を指揮する監督によって、どんな曲を使用するかは自由裁量で決められようになりました。
今回の『CHESS THE MUSICAL』では“お芝居”のシーンがほとんどなく“曲”だけで構成されています、いわばコンサート版『CHESS』と言っても過言ではないでしょう。しかも“英語上演”なので、余計『難解なCHESS』となっています。またソビエトの大将・モロコフがこんなに頻繁に出てくる『CHESS』を筆者は観たことがなく、「一体、だれが主役?」と困惑した方も多いのではないでしょうか?

<第一幕>
★プロローグ・ザ・ストーリー・オブ・CHESS(PROLOGUE/THE STORY OF CHESS)
CHESSとは一体どんなスポーツなのか?どういうゲームなのか?CHESSを取り仕切る「審判」ことアービター(佐藤隆紀)がその歴史を語る。
★記者会見(PRESS CONFERENCE)
『ワールド・CHESS・チャンピオンシップ』が、北イタリアのチロリアン・タウン、メラノで開催されようとしていた。現在の世界チャンピオンはアメリカのフレディ・トランパー(ルーク・ウォルシュ)。彼のそばにはセコンドを務めるフローレンス(サマンサ・バークス)がいる。この戦いは、世界チャンピョン・フレディと新しい挑戦者・ソビエト連邦CHESS・チャンピョン・アナトリー(ラミン・カリムルー)のタイトル防衛戦で、メラノの市民たちは自分たちの小さな町で起ころうとしている世紀のイベントに、熱狂し歓喜の真只中にあった。フレディのチャンピオンはこの試合の膨大な賞金に胸踊らせていた。今までマイノリティであった『CHESS』というスポーツ(ゲーム)を“自分の名誉”と共に全世界のメディアを通して披露しようとしていたのだ。 最初は気持ちよくプレスのインタビューに応じていたフレディだが、次第に質問内容が「CHESSとは関係のないこと」に及ぶとフレディは怒り心頭!CHESSをするためにメラノに来たフレディの怒りはついに暴発し、記者の一人を殴ってしまう。
★アナトリーとモロコフ(ANATOLY & MOLOKOV)
他方、世界王者の座に挑むソビエトのCHESS王者、アナトリーと、彼のセコンドであるモロコフ(増原英也)は、新聞でフレディの会⾒の記事を読んでいる。 モロコフは「フレディが正気ではない」とフレディを切って捨てる。しかしアナトリーの考えは違った。フレディは「試合前に上等な手段を講じて、騒ぎを起こしているだけなのではないか?」「いやもしかしたら私(アナトリー)に動揺を与えるための作戦に違いないと」考えていた。だが、モロコフは「相手を倒すために一番いいのは、相手の弱みに付け込むことだ」という考えを打ち出し、「フレディの場合、恋人のフローレンスを利用するしかない」とアナトリーに進言する。しかし、CHESSに集中したいアナトリーは、そうしたKGB的戦略が大嫌いだった。彼は、モロコフを追い出す。一人になったアナトリーは、この状況をじっくり考える。
★私の目指す場所(WHERE I WANT TO BE)
CHESSの世界チャンピオンという夢が⼿の届くところにありながらも、⾃分の⽴場を政治的に利⽤されていると感じ、複雑な思いを抱えるアナトリー。アナトリーは落ち着かない。

*『映像』は記者会見(PRESS CONFERENCE)~私の目指す場所(WHERE I WANT TO BE)まで

『WHERE I WANT TO BE』(以下、訳筆者)
夢だって?
野望だって?
私の立場に立ちながら
ピエロになれというのか
かつての私の夢は
今は憑き物のように私ことり憑く
希望は要求に変わり
恋人たちも所有物と同じ
その時、彼らがやって来た
最初はゆっくりと
そしてつつましく……
甘ったるい微笑みを浮かべて
私は扉を開けた
彼らはつかつかと歩みよった
彼らのことなどほとんど知らないのに
彼らは私を友と呼んだ
今、私は望む場所に立ち、
自己を実現し
自分のやりたいことも成し遂げた
が、本当の勝利を手に入れた実感がない
命からがら生き伸びて、
決して後は振り返えらなかった
私の背中を狙い撃ち
私が陥るのを望む黒い存在を恐れて……
狂った車輪がスピードを落とすとき
私は一体どこに行くのだろう? 
出発点に戻るのだろうか?
どうか誤解しないでくれたまえ
不平を言っているんじゃない
これまで時は私の味方だった
あっという間に過ぎた楽しい日々…
でも、もし、私か愛だけでなく
すべての感情を 隠してしまったら
一体、何になるというんだろう……?
今、私は望む場所に立ち、自己を実現し
自分のやりたいこともなし遂げた
が、本当の勝利を手に入れた実感がない
命からがら生き伸びて、
決して後は振り返えらなかった
私の背中を狙い撃ち
私か陥ちるのを望む黒い存在を恐れて……
狂った車輪ガスピードを落とすとき
私は一体どこに行くのだろう? 
出発点に戻るのだろうか?

Who needs a dream?
Who needs ambition?
Who’d be the fool In my position?
Once I had dreams
Now they’re obsessions
Hopes become needs
Lovers possessions
Then they move in
Oh so discreetly
Slowly at first Smiling too sweetly
I opened doors
They walked right through them
Called me their friend
I hardly knew them
Now I’m where I want to be and who I want to be and doing what I always said I would and yet I feel I haven’t won at all
Running for my life and never looking back in case there’s someone right behind to shoot me down and say he always knew I’d fall
When the crazy wheel slows down
Where will I be?
Back where I started
Don’t get me wrong
I’m not complaining
Times have been good
Fast, entertaining
But what’s the point?
If I’m concealing
Not only love
All common feeling
Now I’m where I want to be and who I want to be and doing what I always said I would and yet I feel I haven’t won at all
Running for my life and never looking back in case there’s someone right behind to shoot me down and say he always knew I’d fall
When the crazy wheel slows down
Where will I be? Back where I started.

★異様なそして奇妙な時間(DIFFICULT AND DANGEROUS TIMES)
アメリカ陣営とソビエト陣営が一堂に会する。
★アービター・審判(ARBITER)
どちらのプレイヤーにも大勢の支援者がいるが、その中には政治目的の者や、賭けの目的の者もいる。実に多彩な人間がこの大会に絡んでする。フレデリック・トランパー、通称“フレディ”のグループのリーダーは、長く付き合っている恋人でハンガリー生まれのイギリス人、フローレンス・ヴァッシー。一方、アナトリーの一団のリーダーは、ソビエト政府KGBのアレクサンダー・モロコフで、この選手権を利用してソビエト共産(社会)主義者をなるべく多く産出するよう書記長(TOP)から命じられていた。CHESSの神聖な戦いは、プレイヤーのしならないところで、“米ソ冷戦”にそのまま利用されようとしていた。
知的スポーツであるCHESS選手権は、無情なまでに審判員(アービター)に支配される。アービターは強気だ。「私は審判、私の言葉は法律」。あービターはメラノでの世界選手権の開幕を高らかに告げる。


『アービター(審判)』
私の仕事はレフリー
試合開始の際には
全スポンサーの代表として
みなさんに歓迎の辞を
述べさせて頂きたい
どちらが勝っても私には関係ない
誰も私にちょっかいは出させない
私は冷静で中立の立場
正義一筋
ブラック又はホワイト
私は審判、
ただ今、審判中
正義一徹、
干渉はさせない
反対意見は ただちに却下
そう、私は番判、
任せるがいい
[コーラス]
彼は公平!どんなに押しても動じないさ
[アービター]
それぞれ隠し持つ秘密のトリック
まあ、お好きなように……
だが作戦はお見通し
私は審判、得点表が相棒
[コーラス]
四角い掲示板から、彼は64駒を見続ける
[アービター]
過去に登場したモロモロを
ちょっと振り返って考えてみようか
歌う導師やウォーキー・トーキー
ストライキに睡眠技師
かんしゃくに挙に……
まだよちよち
このゲームは第三次世界大戦の始まりじゃない
政治的策略はご法度被る
双方の憲法もご立派だし
そう、だから、いい子ちゃんでいてくれよ
私は審判、
ただ今、審判中
正義一徹、
干渉はさせない
反対意見は
ただちに却下
そう、私は審判、
任せるがいい
[コーラス]
彼は公平 どんなに押しても動じないさ
[アービター]
それぞれ隠し持つ秘密のトリック
まあ、お好きなように……
だが作戦はお見通し
私は審判、得点表が相棒
[コーラス]
四角い掲示板から、彼は64駒を見続ける
[アービター]
そう、私は審判、任せるがいい
[コーラス] 四角い掲示板から、彼は64駒を見続ける

 [ARBITER]
I’ve a duty as the referee
At the start of the match
On behalf of all our sponsors
I must welcome you
Which I do — there’s a catch I don’t care if you’re a champion
No one messes with me
I am ruthless in upholding
What I know is right Black or white — as you’ll see I’m on the case
Can’t be fooled
Any objection
Is overruled
Yes I’m the Arbiter and I know best
[CHORUS]
He’s impartial, don’t push him, he’s unimpressed
[ARBITER]
You got your tricks
Good for you
But there’s no gambit
I don’t see through
Oh I’m the Arbiter I know the score
[CHORUS]
From square one he’ll be watching all 64
[ARBITER]
If you’re thinking of the kind of thing
That we’ve seen in the past
Chanting gurus, walkie-talkies,
Walkouts, hypnotists,
Tempers, fists — not so fast
This is not the start of World War Three
No political ploys
I think both your constitutions are terrific so
Now you know — be good boys I’m on the case
Can’t be fooled
Any objection Is overruled
Yes I’m the Arbiter and I know best
[CHORUS]
He’s impartial, don’t push him, he’s unimpressed
[ARBITER]
You got your tricks
Good for you
But there’s no gambit
I don’t see through
Oh I’m the Arbiter I know the score
[CHORUS]
From square one he’ll be watching all 64
[ARBITER]
Yes I’m the Arbiter I know the score
[CHORUS]
From square one he’s watching all 64

【東京国際フォーラムホールC】
2020/2/1(土)~2020/2/9(日)
料金S席 13,500円 A席 10,000円 (全席指定・税込)
問い合わせ:梅田芸術劇場 0570-077-039
2月1日土曜日・17:30
2月2日日曜日・12:30・17:30*
2月3日月曜日・18:30
2月4日火曜日・13:30
2月5日水曜日・13:30・18:30
2月6日木曜日・休演
2月7日金曜日・13:30
2月8日土曜日・12:30・17:30
2月9日日曜日・12:30
*アフタートーク(登壇者:ラミン・カリムルー、ルーク・ウォルシュ、佐藤隆紀)
◆チケット取り扱いhttps://www.umegei.com/schedule/838/ticket.html#place936
★公演時間 約2時間20分(25分間の途中休憩を含む・英語上演・日本語字幕有り)


★出演者
アナトリー:ラミン・カリムルー
フローレンス:サマンサ・バークス
フレディ:ルーク:ウォルシュ
アービター:佐藤隆起(LE VELVETS)
スヴェトラーナ:エリアンナ
モロコフ:増原英也
飯野めぐみ
伊藤広祥
大塚たかし
岡本華奈
柴原直樹
仙名立宗
染谷洸太
中井智彦
菜々香
二宮愛
則松亜海
原田真絢
武藤寛
森山大輔
綿引さやか
和田清香
(五十音順)
※河野陽介は一身上の都合により降板致します。これによる払い戻しは行ないませんことご了承ください。 ※都合によりキャストが変更になる場合があります。
★STAFF
作曲:ベニー・アンダーソン、ビヨルン・ウルヴァース
原案・作詞:ティム・ライス
演出・振付:ニック・ウィンストン
音楽監督:島健
照明:ベン・クラックナル
音響:大野美由紀
映像:ダンカン・マクリーン
衣裳:DAISY石橋瑞枝
ヘアメイク:森哲也
演出助手:加藤由紀子
舞台監督:藤崎遊
大阪公演主催:梅田芸術劇場/ABCテレビ
東京公演主催:梅田芸術劇場
後援:WOWOW
企画・制作:梅田芸術劇場


<続く>


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