『マンマ・ミーア!』の25周年記念ブロードウェイ全国ツアーが、3月4日から9日までノーフォークのクライスラーホール(※)で上演される。
*左から順に、ジャリン・スティール(ターニャ役)、クリスティーン・シェリル(ドナ・シェリダン役)、カーリー・サコラヴ(ロージー役)。ブロードウェイ全国ツアー『マンマ・ミーア!』の公演が、3月4日から9日までノーフォークのクライスラーホールで開催される。
ABBAの音楽は50年以上にわたり、観客を踊らせ、はしゃがせ、「人生最高の瞬間」を楽しませてきた。
そして、『マンマ・ミーア!』が3月4日から9日にかけてクライスラーホールに登場する際も、同じような反応が期待される。
しかし、このミュージカル、さらにはABBAの音楽が、オリジナルリリースから何年経っても愛され続けるのはなぜなのだろうか?
その理由の一つは、間違いなくABBAの豊富な楽曲のカタログにある。1974年から1982年の間に、ABBAはビルボード・ホット100で14曲のトップ40入りを果たし、その中には1位に輝いた「ダンシング・クイーン」も含まれている。
しかし、スウェーデンの4人組が再び脚光を浴びるきっかけとなったのは、1999年にロンドンのウェストエンドでミュージカル『マンマ・ミーア!』が初演されたことだった。このミュージカルはウェストエンド史上3番目に長く上演された作品となった。さらに2001年にブロードウェイに進出すると、2024年のBackstage.comの記事によれば、ブロードウェイ史上9番目に長く続いた作品となった。
*ABBAのメンバー、ビヨルン、アグネタ、フリーダ、ベニー。グループの絶頂期は1970年代後半から1980年代初頭にかけてだったが、今日のティーンエイジャーも、大ヒットミュージカル『マンマ・ミーア!』のおかげで彼らの音楽を知っている。
『マンマ・ミーア!』の脚本を手がけたキャサリン・ジョンソンは、2008年公開の映画版『マンマ・ミーア!』の脚本も執筆し、2018年に公開された続編『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』のストーリーにも携わった。
「私はもともとABBAが嫌いでした」とジョンソンは2012年のモントリオール・ガゼットのインタビューで認めている。「ABBAは私が嫌っていたものの象徴でした。私はニューウェーブやパンクが好きで、特にザ・クラッシュのファンでした。ABBAはヨーロッパのポップミュージックで、チーズっぽい(※)感じがして嫌だったんです。でも、それを乗り越えました」。
そんな彼女の考えを変えたのが、1992年にリリースされたABBAのベストアルバム『ABBAゴールド』だった。友人たちがパーティーで流すそのアルバムを聴くうちに、ジョンソン自身も、そして彼女の周囲の人々も「実はABBAが好きなんだ」と認めるようになった。
「本当に彼らに敬意を抱くようになりました」。
グラスフィールド高校(バージニア州チェサピーク)の演劇教師、ローラ・アグデロは、2022年に同校の『マンマ・ミーア!』公演を演出し、現代のティーンエイジャーたちがABBAの楽曲にすぐ夢中になる様子を目の当たりにした。
「生徒の中にはすでにミュージカルを通じてABBAの曲を知っている子もいました。でも、彼らの親世代はもともとABBAに馴染みがありましたし……それに今やTikTokでもたくさん流れていますからね!」とアグデロは笑いながら語る。
また、ジョンソンが1970年代の楽曲を元に作り上げた「若い女性が結婚を控え、自分をバージンロードへとエスコートしてくれる父親を探している。しかし、母親にはその父親が誰なのかわからない」という物語にも感心している。
「でも、曲の中に描かれるストーリーが、人々の心に響くんです。愛や失恋といったテーマは、誰もが共感できるものですから」。
『マンマ・ミーア!』の成功により、ABBAは再び脚光を浴びた。その影響は大きく、アグネタ、ビヨルン、ベニー、フリーダの4人は数年前に再結成を果たし、40年ぶりのスタジオアルバム『Voyage』(2021年)をリリース。さらに、デジタル技術で若かりし姿を再現した「ABBAtars(アバター)」によるバーチャルコンサートを開始した。
しかし、『マンマ・ミーア!』で使用されている1970年代から80年代初頭の名曲こそが、ABBAのレガシーを今も生き続けさせている。
「今の子供たちも『マンマ・ミーア!』が大好きなんです」とアグデロは言う。2022年の公演のポスターを見た生徒たちは、「1年生の子たちでさえ『ああ、今やれたらいいのに!』と言うんです」。
『マンマ・ミーア!』は3月4日から9日までノーフォークのクライスラーホールで上演される。詳細は sevenvenues.com をチェック。
※ノーフォークのクライスラーホール(Chrysler Hall) は、アメリカ・バージニア州ノーフォークにある主要なパフォーミングアーツセンターです。
概要
- 所在地: バージニア州ノーフォーク、ダウンタウンエリア
- 開業: 1972年
- 収容人数: 約2,500席
- 主な用途: ブロードウェイミュージカル、コンサート、バレエ、オペラ、講演会など
特徴
- ノーフォーク交響楽団(Virginia Symphony Orchestra) の本拠地
- ノーフォークボレット団(Ballet Virginia) や バージニアオペラ(Virginia Opera) なども公演を行なう
- 大規模なブロードウェイツアーの上演地としても人気が高く、『マンマ・ミーア!』や『ライオンキング』などの有名ミュージカルが公演されている
クライスラーホールはノーフォークの文化的中心地の一つであり、アートやエンターテイメントを楽しめる重要な会場です。
※「チーズっぽい」とは、日本語でいう 「ダサい」「安っぽい」「ベタすぎる」「わざとらしい」 というような意味に近いです。
英語の “cheesy” には、
- 古くさくて安っぽい(例:「80年代のチーズっぽいポップソング」)
- わざとらしく感傷的(例:「チーズっぽい恋愛映画」=ベタなラブストーリー)
- 過剰にキラキラしている(例:「チーズっぽい衣装」=派手でギラギラした感じ)
といったニュアンスがあります。
キャサリン・ジョンソンが「ABBAはチーズっぽい(Europop cheese)」と言ったのは、当時の彼女が「洗練されていない、大衆的すぎるポップミュージック」と感じていたという意味ですね。