夕食の休憩が終わり、人々が自分の持ち場に向かうと、会場には緊張感、興奮、そして強い決意が満ちています。しかし、それ以上に目に入るのは、そこにいる人々の笑顔です。生徒たち、教師、保護者ボランティア——彼ら全員が、ここにいられることを心から喜んでいます。リハーサルも大詰めを迎え、感謝の気持ちが至るところに溢れています。
＊『マンマ・ミーア』のキャストとスタッフ。写真提供：マイケル・ルジェーロ。
エンシナル高校（EHS）（※）の4人のシニア（最上級生）にとって、この『マンマ・ミーア』への参加は、ただ楽しいだけではなく、これまでの歩みを振り返る機会でもあります。彼らが高校に入学した当時、長年にわたって指導してきた演劇監督が退職し、さらにパンデミックの影響で演劇プログラムは完全に消滅していました。しかし、彼らは今、EHSの過去6作品に携わった経験を持つベテランとなっています。彼らは感謝の気持ちを抱くと同時に、EHS演劇プログラムや学校全体からも感謝される存在となっています。
2021年秋、EHSでは演劇公演が行われませんでした。しかし、4人の1年生（フレッシュマン）が演劇プログラムを復活させようと決意し、『リーガリー・ブロンド』の公演に参加しました。この作品が、かつての演劇監督ロバート・ムーアヘッドを引退から呼び戻し、彼が最後の演出を担当するきっかけとなりました。しかし、翌年の秋にはさらに大きな課題が待っていました。学校が『ザ・ウルブズ』の上演を発表したものの、出演者が10人必要なところ、希望者が集まらなかったのです。そこで、サマンサ・クレミンショー、エミリア・アルネソン、アヴァ・ディーナー、アメリア・エリクソンの4人が必死に勧誘を始めました。最終的に9人しか集まらなかったため、アルネソンが2つの役を掛け持ちすることになりました。
＊ドナ役のアヴァ・ディーナーとソフィ役のサマンサ・クレミンショー。写真提供：マイケル・ルジェーロ。
彼らはやり遂げました。公演を成功させたのです。
新しい演劇監督としてラシェル・モリスが就任し、演劇プログラムは本格的に再始動しました。2023年春には、モリスの演出で『ライトニング・シーフ』が上演され、さらに多くの生徒が参加しました。同年秋には、もう一つのストレートプレイ（ミュージカルではない芝居）『クルー』が上演され、新監督メーガン・テイラーのもと、EHS卒業生のオーガスト・アルネソンがアシスタントを務めました。このときは、追加の勧誘をする必要はありませんでした。そして2024年春には、テイラーとモリスが協力し『ミーン・ガールズ』を上演。舞台にはさらに多くの新しい顔が並びました。
現在、アルネソン、クレミンショー、ディーナー、エリクソンの4人はシニアとなり、演劇プログラムは以前とは比べものにならないほどの成長を遂げています。2023年秋に上演された『アウトサイダーズ』では、これまでで最も多くの生徒が参加しました。そして今、EHSは春のミュージカル『マンマ・ミーア』を上演する準備が整いました。この作品には、4人のシニアが出演するだけでなく、新たな才能を持つ生徒たちも登場し、演劇プログラムの未来を担う存在となるでしょう。
＊ドナ役のアヴァ・ディーナーとハリー役のサミュエル・バートン。写真提供：マイケル・ルジェーロ。
EHS演劇プログラムの再建への道のりは、決して簡単なものではありませんでした。「最も大変だったのは、先が見えないことでした」とアルネソンは振り返ります。シニアたちは、演劇プログラムを復活させる上で最も重要だった要素の一つは、演劇そのものの特性にあると語ります。クレミンショーは、「演劇はさまざまなコミュニティをつなげてくれるものです。誰にでも居場所がある場なんです」と語りました。
※エンシナル高校（Encinal High School）は、アメリカ合衆国カリフォルニア州アラメダ市の西端に位置する公立の中高一貫校です。 1950年代に約17エーカーの土地に設立され、6年生から12年生までの生徒を受け入れています。2021年春には5,000万ドルを投じた改修工事が完了し、新しい校舎や最新の科学実験室、教室、そして屋外学習スペースが整備されました。同校のビジョンは、生徒、教育者、職員、そして地域社会から特別で素晴らしい高校と認識されることを目指しています。エンシナル高校は、ダイナミックで魅力的、かつ革新的な環境の中で、すべての生徒が大学やキャリアに向けた準備を行えるよう努めています。
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