〝6年ぶりに『マンマ・ミーア!』が名古屋に凱旋〟!名古屋の街は『マンマ・ミーア!』色に染まっていた。6年前の名古屋公演は、日本公演初演時から主役を張っていた保坂ドナの引退、そして『MAMMAMIA!THEMOVIE』の公開などが重なり、かなり重苦しい「後味の悪い終わり方」となってしまった。事実、この後『マンマ・ミーア!』は暫く「休演」することとなった。
そんな「アウエー」な状況で迎えた『マンマ・ミーア!』名古屋セカンド公演。今回の一番の目玉は、2002年12月の『マンマ・ミーア!』日本公演初演より13年間ロージーを演じてきた〝青山弥生ロージー〟が「スーパー・バイザー」に就任したことだ。
まず青山ロージーは劇場の一番後ろから全体を一望する。そして観客、一人一人と握手を交わすシーンはファンにとってはまさに「サプライズ」そのものであり、劇団四季『マンマ・ミーア!』史上〝初〟の試みになった。素晴らしい光景だ。
「ああ、久しぶりねえ」「今回で43回目の観劇ですよ」「あなたなくして『マンマ・ミーア!』はここまで来なかったわよ」と挨拶を交わした。周りに人がいなければいつものように「ハグ」していたところだ(一瞬そういう雰囲気になった)。
前回の『東京・秋セカンド公演』は誰もが「『マンマ・ミーア!』の進むべき道」がわからなくなっていた。そこはかとなく漂う「臨終感」。覇気のない俳優のセリフ。何かに怯え、あるいは興ざめしている役者達の顔色。「事態は最悪」だった。『マンマ・ミーア!』開演以来〝最大のピンチ〟を迎えた。
それを払しょくするかのような昨日3月28日の『マンマ・ミーア!』名古屋セカンド公演の初日は、まるで日本公演初日に戻ったような〝緊張感〟の中にも〝『マンマ・ミーア!』を演じられる歓び・誇り〟を各俳優陣に感じた。筆者は珍しくところどころで「涙」した。
〝江畑ドナ〟を中心に『NEWドナ&ザ・ダイナモス』でやっていくんだという姿勢がハッキリした瞬間でもあった。何しろ江畑ドナは〝世界最年少のドナ〟。実は海外からも筆者には心配の声が届いていた。昨年、国際プロデューサーのトレイガス氏にお会いした時「正直、どう思うか?」質問され、筆者も無難に応えたものの、正直、危惧していたのは事実だ。
だが昨日の公演は「もう江畑ドナで大丈夫!」と太鼓判を押せる出来栄えで思わず「涙」してしまった。また光川ターニャは東京・秋セカンド公演までは「自信なさそう」な演技だったが、昨日は打って変わって「素晴らしいターニャ」を演じてくれた。確かに過去のターニャに比べ、光川ターニャは「線は細い」かもしれない。しかし、とにかく「歌唱力は抜群」だ。それに加え、昨日は演技もキラリと光る箇所がたくさん観られた。特に「ダズ・ユア・マザー・ノウ」の場面は、エロス感満載で、稽古の成果を物語っていた。江畑ドナ、光川ターニャと共に久居ロージーも『過去最高の演技』を魅せてくれた。今までは「青山ロージー」の陰に恐れおののいていたのか?それとも何かに怯えていたのか定かではないが、久居ロージーに「自信」が全く見られなかった。だが昨日の久居ロージーはどうだろうか?青山ロージーと肩を並べるくらい堂々と演じているではないか!ここに『NEWドナ&ザ・ダイナモス』が誕生したことになる。この結果は〝彼女達の努力の賜物〟だと思うが、青山ロージーの「スーパー・バイザー」としての指導あってからこその結果だと思った。*撮影:中島仁實
女性陣は前述したようなスタートを切ったが、男性陣も〝味方ハリー〟が、スーパー・バイザーに就任した青山ロージーの補佐役(スーパー・バイザー助手)に就任し、これまた『NEWパパ三人組』をうまく演出した。佐野ハリーはGOODだ。あのゆったりとしたイメージは原作のハリー像に最も近いのではないだろうか?深水ビルは『極道の妻たち』に出て来そうな雰囲気だが(すみません)、なかなか過去いなかったビル役だと感じた。阿久津サムは言うことなし。筆者と会うたびに「一度でいいから最初から最後まで演じたいのですよね」と言っていたが、今回は是非「名古屋セカンド公演の最初から最後まで」をサムとして演じてほしい。
竹内スカイはやや緊張していた。日本公演初演時よりスカイは「劇団四季式メソッド」があわないのか?あるいは意図的にああいう感じで演じるように指導されているのかはわからないが、どうも「うわづっている」気がする。スカイは『マンマ・ミーア!』の中でも難しい役柄だと思うが、もう少し「自然に」会話してもいいのではないだろうか?歌唱力が素晴らしいだけに、何となくセリフが気になるのは筆者だけだろうか?
NEW『マンマ・ミーア!』はこうしてスタートを切った。保坂ドナ→模索期→濱田ドナ→樋口ドナ、そして今回目出度く『江畑ドナが定着』したことになると言っても過言ではないだろう。『マンマ・ミーア!』の進んでいく方向も全員が理解できたと思う。何かに怯え、未来への不安感も俳優陣からは消えた。セリフも堂々と「心を籠めて」語っていたのは本当に久々に観た。日本はイギリス、アメリカに続き「世界三番目」に『マンマ・ミーア!』をロングランで上演している。劇団四季にとって『ライオンキング』に続く、大ヒットロングランになってほしいと切に願う。
なお、昨日は久々にカーテンコールは7回!サイリュームも数が増えた。普段は拍手が起こらない「アワ・ラスト・サマー」の箇所も13年間の『マンマ・ミーア!』日本公演で〝初めて〟拍手が起こった。各俳優陣の努力に感謝すると共に、主催者の劇団四季にも大拍手を送りたい。何度観に行ってもハッピーになれる。それが『マンマ・ミーア!』なのである。*撮影:中島仁實