8月9日(日)、新名古屋ミュージカル劇場で『マンマ・ミーア!』名古屋セカンド公演が千秋楽を迎えた。当日、炎天下の元、劇場は熱気にあふれ、『マンマ・ミーア!』恒例のカーテンコールでは色とりどりのペンライトが曲にあわせ、会場がディスコ化した。
この日の『千秋楽特別カーテンコール』では、「サンキュー・フォー・ザ・ミュージック」をアカペラで披露。カンパニーを代表してドナ役・井上智恵(以下敬称略)、ターニャ役・光川 愛、ロージー役・青山弥生が挨拶すると、観客から万感の思いが詰まった拍手が起こった。 最後のナンバーは「アイ・ハヴ・ア・ドリーム」。名古屋公演の集大成として、観客への感謝とカンパニーの夢をのせたカーテンコールに、一緒に口ずさんだり、涙をぬぐったりする観客も多数見られた。ドナとソフィ、母と娘が未来に向かって歩き出し、こうして4ヶ月半にわたる『マンマ・ミーア!』名古屋セカンド公演は幕を閉じた。
しかしこの日の会場はかつての雰囲気とは違い「劇団四季の今後への不安」があちらこちらで聞かれた。
筆者は、四季関係者、元四季社員に一年以上取材を通してありとあらゆる「四季の事実、真実、噂」を知り得たが「全部が本当」だとは思っていない。しかし「引退」した浅利慶太氏が四季を退いたにも関わらず「新事務所」を設立し、自由劇場で『オンディーヌ』や『李香蘭』を堂々と上演し、それを劇団四季が後押しする姿勢は多くの「劇団四季ファン」に混乱を読んでいるのは事実だ。確かに劇団四季を設立したのは浅利氏だ。だが「引退」=「四季とは関係を絶つ」ことが本当の〝社会常識〟ではないのか?しかも記者クラブ所属メディアが浅利氏のことを「引退」と報じていながら、奥さんの野村玲子氏も四季を辞めている。同時に〝浅利シンパ〟と言われるスタッフ・俳優が浅利氏の四季退任と共にやめていることは、四季内部で「内覧」「造反」があったと憶測されても否めない。つまり一部週刊誌が報じているように「浅利氏追放」「浅利氏関係者もクビ」もいささかながら事実を認めざるを得ないのではないか?
浅利氏が作り上げた「俳優にバイトさせたくない劇団」。今では日本のみならずアジアを代表する大劇団となった。だが浅利氏と劇団四季の関係が今のまま継続することは日本ミュージカルの発展につながらないのではないかと思う。前述したが浅利氏は劇団四季と縁を切ったのならば「独自」で宣伝、チケット販売をすべきだし、劇団四季は浅利氏の残した劇団四季の経営を浅利氏に頼らず、良いところはそのまま残し、悪いことは思い切り排除すべきではないだろうか?
<浅利氏プロデュースのオンディーヌキャスト>
浅利のもとに結集したのは、まず野村玲子(以下敬称略)。元劇団四季のトップ女優。主人公を演じ上げてきた彼女が水の精オンディーヌを演じた。
オンディーヌと並び主役の相手役ハンスには、劇団民藝から劇団四季へと活躍の場を変えてきた中村伝。そしてベテランとして知られる斉藤昭子と、野村の1期下だという坂本里咲が続く。さらには、今は劇団を離れているものの、かつて四季で数々の魅力的な演技を披露してきた広瀬彰勇と下村尊則もしっかりと支えている。また劇団以外からも、山口嘉三、岡田吉弘、高草量平、山口研志、桑原良太、白倉裕人、斎藤譲と、劇団昴関連を中心とした実力派俳優が集まっている印象だ。そのほか、田野聖子、山本貴永、笠松はる、山田大智、花岡久子、滝沢由佳、畠山典之、笹岡征矢、橋本由希子、高橋怜奈、鐘岡りお、生形理菜、森佐和子、向かい萌花、合田衣久美、橋本奈奈、伊藤夏輝、岩崎若葉と、劇団との縁のあるなしにかかわらず、大きな力になっている。
浅利氏が劇団四季の俳優を使わず、元劇団四季、あるいは劇団四季と縁もゆかりもない俳優を起用するのは浅利氏の自由だ。だが「劇団四季以外の俳優が出演する演目」をなぜ劇団四季が宣伝に携わるのかは、さすがに納得できない。それでも平然と今後も同じことを続け得るならば、『マンマ・ミーア!』でもドナ役に保坂さん、濱田さん、ソフィ役に吉沢さんなど、かつて一世風靡を浴びた俳優を再登場させてもよいという理屈になる。
どうもエンターテインメント業界は〝社会に逸脱〟した、あるいは〝非常識〟なことがまかり通る業界である。忘れてはいけないのは『お客様あっての演目』だということだ。それを忘れて、自分の好き放題に業界を牛耳るのは正直、一(いち)ジャーナリストとして納得できない。多くの劇団四季ファンが疑問に思っていることを記者クラブ所属メディアは書かないので、筆者が代表して述べさせていただいた。
四季の再生、『マンマ・ミーア!』の次期開催決定。今後も目を離さずに追っていきたい。